書面添付制度とは

「書面添付」は、申告書の正当性を税務署に主張できる唯一の書面です。

「書面添付」とは、税理士が自身の作成した申告書の正当性について、専門家の立場から具体的に検討した内容を書面に記載して提出することができるというものです。(税理士法第33条の2第1項)

書面添付が申告書とともに所轄税務署に提出されると、税務署は税務調査の通知をする前に、まずは予め税理士に添付書面の記載内容について意見を聴取しなければなりません。(税理士法第35条第1項)

また、国税当局は、税の専門家である税理士が作成した書面添付を尊重し、税務調査先の選定等の判断において書面添付を積極的に活用することが求められており、納税者の負担軽減に大きな意義を有しているといえます。


書面添付提出によるメリット

書面添付を提出すると、税務調査を省略できる可能性があります。

書面添付は申告書の提出時点で、申告内容の正当性を主張できる唯一の手段であるという大きな意義を有しており、以下のようなメリットがあります。

  1. 書面添付が提出された場合、税務調査の選定対象とならない可能性が高くなります。
  2. 税務調査の選定対象となったとしても、税理士と税務署による事前の意見交換により疑問点が解消されれば、調査が省略されることもあります。

このように、書面添付の提出により税務調査が入る可能性が低くなることで、納税者の負担が軽減されるという大きな意義があります。

ただし、上記のメリットを享受するためには、書面添付に記載された検討内容が、調査省略に値するほど充実していることが必要となってきます。ただ単に「問題なし」としか記載されていないものや、検討過程の記載が非常に薄い書面添付については調査省略の対象として認められませんので、注意が必要です。


重要なのは書面添付の検討内容が充実しているか

書面添付は、記載内容が充実していなければ全く効果を有しません。

上述の通り、書面添付提出によるメリットを享受するためには、書面添付に記載された検討内容が充実している事が大前提となります。

なぜなら、国税当局が税務調査先の選定や税務調査省略の判断を行うにあたっては、書面添付によって疑問点が解消されるかどうかが大きなポイントとなりますが、検討内容の充実していない書面添付であれば、国税当局は申告内容について疑問点が解消されず、税務調査に入らざるを得なくなるからです。

この点について、平成20年6月に取りまとめられた「書面添付制度の普及・定着」によると、「税務調査の省略通知は、記載内容が良好な書面のみを対象とするのが相当とされ、すべての書面を対象とするものではない」との整理がなされています。

以上のことから、書面添付提出の鍵は、税理士が業務チェックリスト等に基づき申告内容の十分な検討を行い、充実した内容の書面添付を作成することにあり、それは税理士の品質管理水準に大きく依拠するといえます。


税理士全体の書面添付提出割合について

税理士全体の書面添付提出割合は非常に低い水準となっています。

日本の税理士全体の書面添付提出割合は以下の通りとなっています。


 ◆ 書面添付提出割合の状況(法人税)
平成23年度平成24年度平成25年度
書面添付提出割合
7.4%7.8%8.1%

上記のように、日本の税理士全体における書面添付提出割合は非常に低い水準となっています。

さらに、書面添付を提出している税理士の中でも、充実した検討内容の書面添付を提出している税理士の数が更に少ないことを鑑みれば、効果的な書面添付の提出割合は上記よりも更に低くなることが伺えます。

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