基礎知識 (法人税No.2)
- 売上の計上時期について
- 売上の計上時期について、法人税法上は「権利確定主義」に基づき計上を行うこととなります。つまり、現金収入のあった時期ではなく、現金を収入すべき権利の確定した時期に売上を計上することとなります。
たとえば、商品や製品を販売したことによる売上の計上は、「引渡し」があった日に計上を行うこととなります。ここで、法人税法基本通達によりますと、引渡日の判定基準として以下のものが掲げられています。- 出荷基準・・・商品等を工場や倉庫から得意先に向けて出荷した日を売上計上日とする方法です。実務で一般的に採用されている基準です。
- 検収基準・・・商品等を納入して得意先の検収印をもらってはじめて、売上計上する方法です。たとえば、機械メーカーなど、製品の納入後、据付や試運転等に日数を要するような場合にこの基準を適用することがあります。
- 使用収益基準・・・得意先にて商品等を使用収益できることとなった日に売上計上する方法です。土地や建物など不動産の取引に適用されます。
以上の基準は例示として掲げられており、その他にも一般に公正妥当な会計基準に照らして合理的な基準であれば、上記以外の売上計上基準も認められます。
なお、「収益認識に関する会計基準」(平成30年3月30日)を受けて、法人税法においても平成30年度税制改正により、売上計上に関して新たな規定が設けられました。- 資産の販売等による収益の額は、原則として引渡基準又は役務提供完了基準により益金の額に算入する。
- 上記1の例外として、契約効力発生日基準や出荷基準など、引渡しまたは役務提供の日に近接する日の属する事業年度の益金の額とすることができる。
- 上記2の処理を申告調整で行った場合も、確定決算により収益に計上したものとみなす。
- 収益の額は、資産引渡し時の時価又は役務提供時に通常得べき対価の額とする。
- 上記4の対価の額につき、貸倒や返品の可能性があっても、それは認識せずに収益の額を計上する。
ただし、ここで注意が必要なのは、法人が上記の計上基準を自由に選択できるのではなく、あくまでも適用しようとする基準がその棚卸資産の種類及び性質、販売契約の内容等に応じて引渡しの日として合理的であるということが求められます。
また、一度採用した売上計上基準は、合理的な理由が無い限り、その後も継続して適用する必要があります。
2019年8月17日
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